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SPring-8利用者懇談会

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利用業務部 山田裕弘氏、神辺圭一氏

- SPring-8利用者懇談会について教えてください。

山田氏:

SPring-8 利用者懇談会は、大型放射光施設 SPring-8(スプリングエイト)における会員の研究活動の進展、会員相互の交流の促進を図ることなどを目的とした懇談会組織です。

SPring-8の利用に関心をもつ研究者・技術者等が入会を申し出て、評議員会においてその入会が適当と認められることで会員になれます。本会に登録された会員は、SPring-8の利用計画の検討、利用に関する会員相互の情報交換や要望のとりまとめ、シンポジウムやワークショップなどの学術的会合の開催、さらに研究課題別に公募により組織された研究会活動を行っています。私はJASRIに置かれた利用者懇談会の事務局を担当しています。

 

SPring-8 Web Site
SPring-8利用者懇談会

- 神辺さんのご担当のお仕事内容を教えてください。

神辺氏:

私は SPring-8 の利用を促進するための利用者支援システムの管理が主な業務ですが、所内で IT 関連のスキルが必要とされる場面ではそのサポートもおこなっていて、今回は利用者懇談会のシステム化を後方支援する立場でプロジェクトにかかわりました。

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利用者懇談会 Web Top 画面

システム化前の状況(Before)

- キー・プランニングは、懇談会の名簿検索システムをお手伝いさせていただきました。このシステムが開発される前の状況を教えてください。

山田氏:

「会員相互の情報交換」活動をスムーズにおこなえるようにするためには、会員同士がそれぞれの専門分野や研究テーマなどの情報を共有できることが必要です。システム化以前は、情報共有の手段は、紙の名簿でした。

会員は、常に入会、退会があって、構成に変化がありますが、紙の名簿では更新された情報を伝えることができません。最新情報を知りたい会員からの問い合わせには、事務局から個別に回答していました。
また、名簿は2年に1回の印刷、配送をおこなっていましたが、印刷代、配送代の費用が会費からの支出として大きなものとなっていました。
事務局での会員管理については、FileMaker を使った名簿システムをつくり、情報の一元管理までは実現していたのですが、作成者は専門家ではなかったので必ずしも最適な設計にはなってはいなかったようです。

神辺氏:

私が初めて名簿システムを見たときは、例えば、会費の支払い履歴を毎年フィールドを追加して入力しているような設計になっていました。相談を受けた時に、印刷や配送コスト、事務局の省力化などから、Web 化は必要と思いましたが、データベースの正規化については私の方で事前に行うことにしました。

Web システムは、名簿の閲覧とパスワード変更という目的にしぼりこんだため、要件はシンプルでしたが、会員の個人情報を扱うシステムなので、セキュリティには細心の注意が必要です。システムの内製も検討しましたが、セキュリティのことを考えて、利用者支援システムの開発で実績のあったキー・プランニングに依頼することにしました。

開発にあたっての課題は?

- 開発にあたって、どのような課題がありましたか?

神辺氏:

最大の問題は、コストでした。
SPring-8 利用者懇談会は、会員の会費で運営されている組織ですので、大きな開発コストをかけることができません。また、保守、運営コストもほとんど予算がなかったため、自分たちで管理できることが必要でした。そのため、事務局のシステムについては、FileMaker ベースのシステムを改善しながら、活用することにしました。

一方、FileMaker Server による Web 公開用のサーバを新しく用意することは、コストの問題と、ハードウェアを含めた管理業務が発生することが技術や人的負担の点で問題になりました。

キー・プランニングに相談したところ、Web 公開のサーバはレンタルサービスを利用し、ESS(FileMaker の外部 SQL データソース)の機能を用いて事務局のデータベースと連携するといった提案を受けました。維持コストが小額ですむ上に、サーバや回線の管理業務をアウトソースすることにもつながるので、この構成案を採用することになりました。

低コスト開発を実現するために

- 開発コストを最小限に抑えるために、キー・プランニングからは仕様の細部確認の徹底をお願いしました。この点については、どのようにお感じになりましたか?

神辺氏:

キー・プランニングとは別プロジェクトでも仕事をしていたので、その意識は共有していましたし、私自身も管理者としてエンドユーザーの要望で作業の手戻りを強いられることもあるので、仕様変更によるロスは理解しています。ただ、今回のプロジェクトでは発注者ではなく、技術的なサポートをしている立場でしたので、調整の段階では、立場的に辛い時もありました(苦笑)。

ただし、仕様の細部まで詰めて、十分な確認をすませていたため、着手後のスケジュールは極めて順調でした。ESS を使うことが初めてだったので、事務局データベースとの連携に不安はありましたが、開発がスタートして間もなく、MySQL に移植されたデータベースを ESS 経由で操作できるようになったため、操作性や処理速度に問題ないことが分かり、安心しました。

- 今回は、Web 関連部はキー・プランニング、事務局データベース部は SPring-8利用者懇談会様の作業という分業プロジェクトでしたが、この点はいかがでしたか?

事前に、Web 関連(MySQL)/非関連(FileMaker)の仕分けをテーブル/フィールド照合表という形で確認してあったので、作業はスムーズに進みました。

ESS のテーブルは通常の FileMaker テーブルと同じようにリレーションを張ることができるので、事務局システムで必要なフィールドの追加などは FileMaker テーブルを使って行うことができます。FileMaker システムの長所であるカスタマイズ性を維持できたことで、開発後の変更は、委託コストをかけずに、自分たちでおこなうことができています。

開発後の状況(After)

- システムによって導入前の問題は解消されましたか?

山田氏:

名簿の印刷、配送は不要になりましたし、会員が常に最新情報をオンラインで閲覧することができるようになったのは大きな改善だと思います。私は技術的なことは詳しくはありませんが、少なくとも、今までこのシステムに関連して、会員からの問題指摘などは聞いたことがありません。

ESS(ODBC 経由の外部 SQL データソース)の活用について

- このプロジェクトは、外部のレンタルサービスを活用した ESS のシステム例としては先駆け的なものだったと思います。このシステム構成についてご意見をいただけますか?

神辺氏:

最大のメリットは、FileMaker の利点であるカスタマイズ性を損なわずに、コストや信頼性を満たしたシステムを実現できたことです。Web と事務局データのテーブルを分離した設計になっているため、事務局データベースを変更しても Web 側に影響がないのは安心できる点です。

レンタルサービスを活用することで、サーバ管理をアウトソースできたことも大きいです。所内にサーバを抱えていると、万一のトラブル時には休日でも駆けつけなければならないというプレッシャーがありますが、レンタルサービスであれば電話一本ですみます。

難しくなったのは、バックアップです。MySQL 上のデータはレンタルサーバ上で、FileMaker 上のデータは所内サーバ上で、それぞれバックアップしなければならないので、ある時点の完全なスナップショットを残すのは難しくなりました。

今後の改善予定

- 今後の改善予定などがあればお聞かせいただけますか。

山田氏:

今期一杯で退会することが分かっている人は事前に退会日を入力できると良いですね。他には、シール印刷で行の左端が揃わないので、修正したいですね。それから、、、

神辺氏:

それは、キー・プランニングではなく、私に言ってください。(一同笑)

- 今日は貴重なお話をありがとうございました。

システムの内容説明

利用者懇談会 名簿検索システムのシステム構成図

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利用者懇談会 名簿検索システムのシステム構成図

  • データベース:
    • FileMaker Server Advanced 9
    • FileMaker Pro 9
    • MySQL 5.0
  • Webアプリケーション:
    • Tomcat 5.0
    • JavaServlet, JSP

会員の検索、検索結果表示画面

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会員の検索、検索結果表示画面

  • 「検索文字列」では、文字種(ひらがな/カタカナ、全角/半角)を問わない検索が可能。レンタルサーバの MySQL 環境では全文検索エンジンを使用できなかったため、FileMaker 上での文字種の変換と Web アプリケーションからのクエリーの文字種変換を組み合わせて実現している。
  • 検索結果は Ajax で動的にロードされるため、ページ全体のロード回数を減らして、処理速度の向上やデータ転送量の減少を実現している。検索条件フォームの入力状態も常に維持されるため、ユーザの操作性も高い。

FileMakerによる管理画面

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FileMakerによる管理画面

  • SPring-8利用者懇談会で作成、管理されている FileMakerによる管理画面。FileMaker 上のデータと MySQL 上のデータがシームレスに統合されている。オペレーターはデータの所在がどこであるのかを意識することがない。